初期の発症から間もない患者において、鍼治療をして数回経つと、鍼の刺入のチックとした感じが、判る様になってくる事をしばしば体験します。この現象は、非常に興味深い意味を持つと臨床の当初から感じていました。しかしながら、当初は臨床経験の不足による刺入のバラつきもあるのではと、自分自身を疑いの1つとして候補にもあげてきました。それは27年前の自分にです。
しかしながら、その理由はそうでは無いと理解できたのは、約25年程前に「顔のしびれ」の治療を担当した時からです。やはりその患者は、当時私が勤務していた病院で精密検査を受けて、脳外科からオーダーが届き治療を私が担当する事になりました。もちろん精密検査の内容データは総てノープロブレム。唯一、血清検査をしていない事を除けば。今となっては血清検査を当時オーダーしていたらと思うのですが、正直に当時はウィルスについての知識と病理に関しては、今より少なかったというのが残念だった事ですが、何よりその時点では原因不明であったのです。その患者の経過は良好で、早期に完治し治療過程において、知覚の回復と共に鍼の刺入時のチクッとした感じが判る様になったのです。本々の私の病院での主な仕事は、脳血管障害の入院患者の治療と外来ですから、末梢性麻痺より中枢性麻痺の患者の絶対数が多く、それゆえ逆に記憶に残っている事となっています。
現在、末梢性顔面神経麻痺の治療において、こうした顔の知覚の異常も同時にあるという事を臨床をもって理解しています。