こうした問題に対して私は鍼治療を通じて、麻痺した神経の回復を考えた治療をしてきました。誰もがさじを投げた患者さんも、ほんの一筋の明かりを頼りに私のところへやってきます。いま私ができる事は本当に少ししか無いけれど、それでも全力で麻痺と戦いたいという思いが皆さんからもひしひしと伝わってきます。
まず、私がすることは、この顔面神経麻痺に対する知識を説明する事、そしてこれからどのように管理して行くか、どのような点を注意するのかなどを時間をさいて説明して行きます。もちろん、心のケアもこの問題には非常に重要です。そうしたなかで、現実と向き合う事ができてくると、麻痺の精神的ショック状態から脱却でき、これからの事を冷静に考える事ができてきます。これがとても大切な事と思います。
次に、治療に関しての総ての質問に適確にわかりやすく答える事。こうした事は先の医療機関などにおいて、説明不足による不安や相談に対する解答の粗雑さを訴える人が多い為に患者サイドでは困惑し、信頼関係を持たぬままの治療をまた続ける事になるので、こうした点をはっきりとする。
そして、個人におけるケアを1つ1つアドバイスして管理する事が大切と考えています。この個人におけるケアは、回復の速度や原因における神経の損傷度、回復のパターンによって細かくは違ってくるのです。その中で、病的共同運動の極力の回避を行う事が大切になると考えています。単に顔の運動はしないようにという事ではなく、こうしたケアの中に1つの方法と私の考える持論により、鍼を通じて治療をしているのが私の現状です。
幸いにして顔の筋肉は他の器官につく筋肉と違って、血行性に恵まれておりますので、筋萎縮が早期に進む事はありません。下肢や上肢の筋肉においては比較的早期に筋萎縮が出てきますが、顔に関しては骨格筋と違って、表情筋という筋線維は網の目のように張り巡らされた血管によって、数カ月間のでの回復を待てる状況だと私は理解しておりますので、慌てて無理な運動は必要ないと考えております。