顔面神経麻痺
 
顔面神経麻痺を考える26
 鍼治療と顔面神経麻痺
      
 こんた治療院

はじめに

 みなさん、こんにちは。時代も令和になり、いよいよ顔面神経麻痺を考えるのコンテンツの後半になりました。今作は皆さんが最も気になる、鍼治療は顔面神経麻痺に有効かという直球的な質問に対する答えと、その理由をしっかりとまとめていこうと思っています。そして、我々の行う鍼治療は、最終的に人の行う行為であるという事を思い出しながら、このコンテンツを読んでいただけたら、私はとても有り難く思います。
 この顔面神経麻痺を考えるというコンテンツは、WEBサイトを見ていただいている皆さんへの情報提供であるという事が大前提であり、この情報を基盤に自分の担当する先生への質問などに利用していただく目的でアップしてきましたので、そうした情報の提供のためのコンテンツである事もご理解いただきたいと存じます。
 また、令和5年にて、この道40年の麻痺治療の集大成をweb上に公開しつつ、あと何年この治療に携わって行く事が出来るか自分にも課題を与えて行こうと思っています。

  こんた治療院 院長
 本題の鍼治療の効果についてお話しする前に、まずはこの神経の麻痺という病態についておさらいしておきましょう。
 一般的な末梢性の顔面神経麻痺、つまりベル麻痺とラムゼイハント症候群における神経の病態を例に説明をしたいと思います。
  神経は生理的に健康状態を保っている時には、薄いピンク色を呈しております。しかし、様々な弊害を受けると徐々にその色が外見上に白く変わってくるのです。これを「神経変性(ワーラー変性)」と呼んでいます。様々な弊害と書きましたが、これは直接神経の圧迫で起こる場合(聴神経腫瘍など。)や、神経の中に出来る腫瘍(神経鞘腫シュワンノーマ、神経線維性種など)や、神経を栄養する血液の供給不足(血管の炎症、自己免疫疾患におけるギランバレー症候群、フィッシャー症候群など)や、神経の外套膜に免疫として存在するヘルペス属の再活性による神経損傷(ベル麻痺、ラムゼイハント症候群など)などが神経を変性させる原因です。

 麻痺を起こした神経は、神経変性を起こしている。この白くなって変性を起こしている神経を、もとの薄ピンク色にもどしてあげる事が、即ち治療として目標になってくるのです。
 もっと具体的に顔面神経の損傷具合を知りたい。
 顔面神経は上記で起きた原因により、神経変性状態に陥っています。すると皆さんが、麻痺を起こしたと表現する事態になります。
 この機能障害の現場(病理)を解説すると。神経の枝の周りには浮腫が起きていてリンパ液が貯留しています。炎症による所見です。顕微鏡支点に切り替えると、神経の本幹でヘルペスウイルスがDNA増殖して傷をつけているために炎症を起こし、運動性の伝達機能を妨害しているのです。皆さんが顔面神経麻痺になった時に、耳の後ろが痛くなる状態の時にこうした炎症による痛みが出ているのです。そうして約1週間ほどで、こうしたウィルスの勢力も落ち着きをみせてきますが、神経の損傷による被害の修復はこの後ゆっくりと行われる事になるのです。

 神経損傷の分類をもっと詳しく載せてあるのは、顔面神経麻痺を考える20 です。
 神経の損傷を修復させるための必要なアイテムとは?

 傷ついた神経を修復する事を医学的には神経再生といいます。末梢神経は神経の再生という修復能力があります。中枢神経の場合はこの能力は無いとされており、ゆえに神経再生という言葉は、末梢神経の損傷を修復するという時に使われます。ここからのお話の内容は、顔面神経麻痺を考える19神経回復の条件と内容が重なります。

 この神経再生には、いくつかのアイテムと環境整備が必要であると私は考えています。それを説明する為に、器質的改善と生理的改善という2つの言葉を用意したいと思います。

 神経再生に必要な、器質的改善の為のアイテムの1つは、皆さんがよく知っているビタミンB12です。このビタミンB12によって組織の修復には欠かせないものです。
 2つめは、赤血球です。赤血球は酸欠状態になっている神経に酸素を運ぶ働きがあり、自分の身体の半分しかない狭い場所には変形しながら前へ進んで行きます。これを赤血球変形能といいます。
 3つめは、この赤血球の変形能を助けるアデノシン三燐酸の存在です。

 神経再生に必要な、環境整備とは何か。
 1つは血液循環の改善です。これは2つの見方がありますが、顔面神経麻痺が起こっていると内部では、顔面神経管という組織がつぶれた状態になっているという学術的見解があります。この顔面神経管を広げるという作業が必要になるという事です。この作業には赤血球の変形能により、酸素などを供給する役割を担っています。もう1つの見方は、炎症によって起こったリンパ液の排除を速やかに行う事は、神経の再生においては必要であり。神経に取りついている血管網の速やかな運動がこうした物質を末端に届けるには重要なのです。これを生理的改善と考えます。

 神経の再生と共に行われなければならい、最重要なもう1つの機能回復。
 運動神経の主たる機能は、筋肉の収縮を行う事です。脳からの指令を受けて、末梢神経を伝い筋肉を収縮させて運動をさせる、そうです、神経伝達機能の回復です。
 皆さんは、単純に神経本体の修復が終われば、神経伝達も完了していると思われるでしょうけれど、臨床現場ではそう簡単にはいかないという症例を突きつけられています。

 例として、上腕部の骨折をして橈骨神経を切断し縫合したが6ヶ月以上経過しても動かない。または、上腕部の骨折にて骨をプレート固定したが、橈骨神経が麻痺して4ケ月以上動かない。脳のオペレーションを行って末梢の顔面神経には傷をつけていないが6ヶ月以上経過しても動きが出ない。など、山ほどその症例を35年前から抱え込んで来た私は、どうやら神経の再生と神経伝達機能は別物と考える事が正しいと思っています。
 さて、基礎的に考える為の項目が出そろって来ました。
 前記した内容は、神経回復の為に治療上最低限必要なものです。このどれが1つ欠けても、神経の回復に影響が出るというものです。
 この文章を読んでいただいている方の中にも、鍼治療を否定的にとらえていらっしゃる方もいますので、私はできるだけ分り易くその効果を伝える為に、お話を展開してゆこうと思います。しかしその前に、顔面神経という神経の性格を展開してゆこうと思います。
 顔面神経の性格と環境
 顔面神経は、脳神経に所属しており、その為に自分の感情を表情として、顔面の筋肉を収縮させる事をします。また、反射的に眼球を保護したり、その運動は不随意なものを持ち合せています。もちろん随意にも運動が出来ます。

 内部的には、耳の場合は三半規管の1つであるアブミ骨をコントロールする為にアブミ骨筋にジョイントしており、音の増幅を担っています。舌の場合は、舌の前 三分の二の味覚を担当しています。
 顔面神経麻痺のおかれている環境については、脳神経の1つである事から非常に血行性に優遇された環境をもっています。手足の末梢神経より格段に、過保護であるといっても過言ではないほど血行性に優れており、神経再生の環境条件としては手足の末梢神経の回復をぬいてトップクラスなのです。故に筋萎縮の進行に関しても、手足の進行の比ではなく、麻痺の回復を充分待てるほど条件が良いのです。ですので、筋萎縮に関してはすぐに慌てる必要はありません。
 顔面神経麻痺の回復における後遺症としての、病的共同運動もその性格の1つと考える事がいえると思います。
 神経は一般的に、ミクロの単位で回復を観察すると、その枝の先がスプレー状に四方に広がりながら手と手を結ぶ様にジョイントされてゆくとしています。そうやって傷ついた部分も修復されてゆくのですが、この修復は本来の神経枝の内部で行われてゆくので、神経枝の外部へはジョイントされないはずです。
 末梢性顔面神経麻痺の場合の、病的共同運動は、神経の器質的変形により生まれたものではなく、伝達経路の問題であると考える方が妥当であろうと思われます。手足の末梢神経はこの様な伝達によるミスジャッジは行われません。これは、顔面神経の特徴に由来するものであり、今後の解明を続けて行かなければならない課題の1つです。
 この様な顔面神経の病理を、回復させるために非常に役に立つのが鍼治療であると考えます。
 時代も古くからこの様な治療を、中国では当然の如く行われて来ました。日本における鍼治療の反映は、西洋医学からそのエビデンスを求められ、臨床的に苦しい立場を長年続けていますが、中国ではその立場は医師として認められ、随分と先に進んで臨床の最先端を進んでいます。

 皆さんも最近は内科の外来でも、漢方薬を処方された事があると思います。中国医学では、気と血という概念において、血の病は基本は漢方薬を処方し、気の病は鍼治療や推拿(すいな)治療を使う事が優先とされています。もちろん、この両方を用いる事でさらに効果を引き出す事に変わりはありません。血をコントロールしているのは気であり、気をコントロールしているのが血とされており、この2つは同時に存在しお互いを必要としている物質と考えます。そしてここでのテーマの神経麻痺や神経痛などでは、気の病に属して来ますので、鍼治療が主役となってくるのです。
 こうした末梢性の顔面神経麻痺に関しては、中国における主役は鍼治療であり、なぜ日本はこれほど効果が期待できる治療を前面に押し出して行かないのか不思議であろうと思います。それはまた次の機会にでもコンテンツにしたいと思います。
 鍼治療は医療であり、その効果は私自身が魅了されるほどのものである。
 今回のテーマである、「鍼治療と顔面神経麻痺」は、皆さんに単に鍼治療を押付けるのではなく、私自身がその効果に35年前から魅了されているのだというお話です。その前に、具体的に顔面神経麻痺というものの病態とその改善すべきものをあげて、こうした問題に対して解決する術を持っているのが鍼治療であると、あらためて皆さんに提示してみました。言うまでもなく、「顔面神経麻痺を考える」のコンテンツが最終章に向かっていると思います。




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 顔面神経麻痺に関係する執筆内容のページです。是非読んでみて下さい。
 こんた治療院 <治療の窓>より抜粋しました。
 毎日、診察の合間にコツコツと執筆しながら早23年が経ちました。皆さんに1つでもお役にたてる事がありましたら、幸いと思いながら、今も尚治療の合間に書き続けている内容です。全国の方から色々な御質問などいただき、毎日心を込めて返信しています。そうしたみなさんの力で、今日まで一生懸命やっていて良かったと思うのは、インターネットのすばらしさの1つだと考えています。
 シリーズ
 顔面神経麻痺を考える

6.1 後遺症各論
<病的共同運動の強調>

7 小児の顔面神経麻痺
:ケア編

8 顔面体操と
顔面の運動は、
やってはいけない

10 顔の痛み 三叉神経痛

21 随意運動と不随意運動

23 やっつけに行く
今回は、
鬼軍曹の
独り言ですか?


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