中国の古書で、漢方薬膳料理等の基礎になる教本である《本草草木》という本があります。その本には食材の1つ1つの薬効成分が書されていますが、その成分は旬に対応して効果を発揮するものであると理解できます。日本では四季という季節の節分を4つに分けていますが、昔は中国では大きく5つに分けて考えていました。その5つとは、春夏秋冬に加えて、土用(どよう)というものです。ご存知の通り、夏と秋の間に入る季節で、最も暑い季節を指します。あの土用のうなぎの土用です。土用には事細かな説がありますが、中国医学(五行論)では季節を5つに分けて、夏と秋の間の季節つまり最も暑い日から残暑までの季節を指しています。
さて、細かいお話はここではしませんが、要するに四季を持つ日本では、その旬を考える事で今食べるべき食材のベストマッチングが容易にできるという事なのです。さらに露地物(ハウス栽培ではないもの)と限定する事で、漢方的ベストマッチングが整うという事なのです。そして、なぜベストマッチングが必要なのかといえば、タイトルの示す通り、旬のものはその季節に合った身体作りをするという事なのです。
ここにその例を少しあげておきましょう。夏の頃盛んに収穫できるものとして、キュウリ、スイカなどがありますが、この様なものは身体の熱を必要以上に上げない、むしろ熱が余分である時には清熱といってクールダウンする作用がある食材と考えています。夏の身体は汗をいっぱいかきますので、水分の補給が必要になってきます。現在の日本では水分の補給は簡単に便利に取る事ができますが、昔では飲み水も容易にとる事ができず、こうした食材からの水分確保は新鮮なお水であることは間違いのないものでした。夏に取れるウリ(瓜)類はこうした水分の補給と、清熱による効果で人の身体の代謝をサポートしているものとして考えています。
冬に向けて盛んに収穫する物として、白菜や大根がありますが、秋冬は乾燥する季節で、身体の乾燥を防ぐために水分の多いこうした食材は非常に重宝します。さらに身体を温める方向性を持っているので、その調理も熱を加える事で更に身体を温めてくれます。大根は今の日本では1年を通じて出回っている野菜ですが、お刺身のつまとしても利用されていますが、実は中国医学では生の魚は身体を冷やす傾向を持つとされており、大根を食す事でバランスも取れると考える事ができます。お寿司に関しては、つまに生姜を使っていますが、生姜も身体を温める傾向を持っています。ついでにシソの葉やわさびは解毒の作用をする様ですから、意外と無意識にも医食同源という事に私たちは日常触れているという事も書いておきましょう。私が昔教わった中国の大学時代の先生は、和食には医食同源に直結したものが多いと言っていましたが、35年近く経過して先生のお話を思い出しながら書いている自分自身にも、和食は良いと再認識しています。
では、保存食はどうなのか?実はこの保存食の考え方が後に、漢方薬として利用されるものになってゆくのです。それは私たちの身体に病態として起こっているもの、特に外邪(がいじゃ)として身体の中に進入する例えば感冒(風邪)やインフルエンザなどを中国医学で分析した結果、身体の中に入ってくるその邪の性質を克服する為に、身体に何が必要かを判断して投入する。これが中医の漢方薬なのです。身体に必要な分だけ投入する事で、外邪を撃退するという方法です。
普段から栄養に気を使っている皆さんとは思いますが、是非とも旬の物、露地物を取り入れてベストマッチングな、お食事も考えてみて下さいませ。
オーガニックにも着目する人も現代では多い様ですが、まずは簡単にできる事から始めて見る事ですね。
おまけ。陳皮(ちんぴ)という漢方薬をみなさん聞いた事はありますか。この陳皮は、赤いみかんの皮を干したものです。陳皮の作用は、胃腸の働きを良くしたり、血圧降下作用もある様ですが、他のお薬とのマッチングで温煦(あたため)効果を引き出す様です。みなさんご存知の、『七味唐辛子』の中に入っています。
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