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目の疲れとして具体的な自覚症状には、目がしょぼしょぼする、痛くなる、焦点があわなくなる、涙が出てくるという訴えが多いです。こうなってくると、自身は思わず指でまぶたを擦ったりして自然にマッサージをして無意識に手当てをしだします。
これはモニターを見る目が疲労を起こしている事には違いはありませんが、目だけではなく首や上半身の柔軟性が失われた事も大きく影響します。というのも、例えば目の焦点が微妙にあわなくなると、人間はモニターとの距離を数ミリから数センチ近くしたり離しながらその焦点ポイントを調整してきます。まさにビデオカメラのオートフォーカス同様に、そのピント合わせに早急に対応する能力があります。
この能力の内、比較的に目の疲労がひどくない時には、身体の姿勢をあまり変える事無く、眼そのものの能力にて調整が可能です。しかし目が疲労してくると人はもっと良い調整方法はないかと無意識にその調整方法を模索し始めます。そしてこの状態が続くと目の疲労を自身が自覚し始めてきます。
では具体的には第2段階としてどのようにそのフォーカスの調整をサポートするのでしょうか?これはみなさんが写真を撮る時などに距離をとる行為と同じく、私達はモニターと目との距離をとる事で、フォーカスをより安定したスピードで行う事をするのです。そしてその最も重要な役割を果たしているのが、頚椎のお仕事です。
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首の疲れとして具体的な自覚症状としては、首の凝りや痛み、頭部と首の接点の凝りなどがあげられますが、この頃になると合併的に起こるものもあります。というのも首の上部には頭部というものがあり下部には肩という部位がありますので、みなさんの御想像のとうりに頭痛や肩こりへの移行が考えられますね。
ここでちょっと脱線しますが、頭の重さはみなさんどのくらいの重さか知っていますか?自分の体重の約13%が頭の重さと言われています。体重48キロの人は6.24キロ、体重65キロの人は8.45キロという重さです。どうですか?想像以上でしょう。
そしてこの頭の重さをどの様にして支えているかというと、実は頚椎という首の骨です。この頚椎は7つの骨によって頭の重さを支えています。この骨は正面や後面からみると真直ぐ積み重なって見えますが、実は横から見ると前方へ軽く彎曲しています。解剖学的にみるとこの彎曲が実は頭の重さを上手に分散し、ストレートに一点に集中して頭の重さがかからないようにしているのです。
目の疲労が第2段階になるとこの頚椎を微妙に使って、首を動かしながら目の焦点を合わせてゆくという動作が普段より頻繁に行われる様になってきます。そしてこの頚椎を動かし安定させるのが首や肩にまとわりつく筋肉のお仕事なのです。
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首と肩の疲れ |
お仕事中に頻繁に首が凝ってくると、首をまわしたり手をあてて揉んでみたりするようになります。すると目の疲労は第3段階で、自身の疲労感も“疲れがたまってきたかな?”という言葉で表現する様になってきます。
この時の首の状況は頚椎を動かす筋肉が疲労を起こし、頚椎の動きが悪くなってきてきています。そのため頚椎が、頭を支える事や目の疲労をカバーするなどの状況にすんなりと応じなくなってしまいます。それどころかこの筋疲労は頚椎を支持する事が精一杯になり、その筋肉の弾力を失ってきます。これが首の凝りということです。この場合の弾力を失うというのは、筋肉が硬くなる事でその効力を失うという事です。
さあこうなってくるともう事体は肩へと移行してきます。お坊さんの袈裟(けさ)の様な形をした菱形の筋肉を僧帽筋と呼んでいますが、この僧帽筋は後頭部を上部として肩の先(肩峰部)に横に広がり、その下部は胸椎全体に広がっています。この僧帽筋は浅背筋といって表層を被う筋肉ですが、この僧帽筋のお仕事が今回のパソコンによる疲労の一躍を担うポイントです。
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僧帽筋のお仕事
僧帽筋は主として肩甲骨を動かし固定します。
僧帽筋は筋肉の線維走行が広く異なっており、運動の方向がそれぞれ異なっています。この運動方向を上部、中部、下部と3つに分けて説明すると、上部が収縮すると肩甲骨と鎖骨の外端が挙上し、肩をすくめるといった運動ができます。中部は両肩を結ぶ様に水平に走る筋線維ですので、気をつけの姿勢で肩を後ろに引く時に収縮します。この時には肩甲骨は身体の中心に向かって引き寄せられ固定されます。下部が収縮すると肩甲骨を回転させ腕を挙げる運動をサポートします。下部の最端は第12胸椎まで伸びていて、その直下は腰椎ですのでかなりの広範囲であることが解ります。またこの下部の僧帽筋は頭を後屈させたり、頭を回頭するのにも関与します。
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肩から
腕の疲れ |
僧帽筋のお仕事には肩甲骨を動かし固定するという動作があります。私達のパソコンの作業としてキーボード操作とマウスの操作はなくてはならない動作です。この作業の疲労は指先や肘や腕の疲れとなって、肩関節から肩甲骨を取巻く筋肉への波及が大きく疲労へ影響しています。
一般的にはパソコン関係の疲労を目から考察しがちですが、実はそういった人たちの身体を治療しはじめると、ある共通した筋緊張を捜しあてることができます。それが今回の私のお話の最大のポイントなのです。
主にマウスを使った動作は、腕を身体から少し離した状態で、肘関節を曲げてマウスに円運動を与えます。この時の肘も同じ様に円を描く様に回転しています。この動作は上肢帯と呼ばれる肩から腕にかけて大きな負荷をかけていると考えられます。
例えば、椅子の上にあぐら(胡座)をかいてマウスの操作をしてみてください。マウスを動かす度に私達のからだが揺れる事に気がつきます。しかし、同じ状態で鉛筆で字を書く動作をしても、基本的に手首の運動だけでそれほど私達のからだが揺れない事に気がつくはずです。またこの様な動作は窓ふきや、車のワックス磨きなどで大きな動作として実演していますが、逆に細かな動作で1日数百回を超えるマウス運動は、労作と考えるには充分であるものと思います。
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マウスを使った運動
このマウスを使った運動は全く新しい運動と考えるべきなのか?
マウスの操作は手首を固定して、肘から先を回転させて使います。この運動に類似したものが実は生活の中でも起こっています。例えばテーブルを拭くという動作です。窓ふきや、車のワックスがけも手首を固定して前腕を回転させてお仕事をします。お習字の筆もこの様に扱う動作が含まれますね。
では、マウスを使った運動と他の類似運動との比較はどうでしょうか?まずは回数の違いです。もちろんお仕事ですからその回数はマウス作業に軍配が上がりそうです。また、モニターと手先の位置を考えると自動車を運転している様に、目先と手の位置が違っている事もわかります。ポインタを追うという動作と手を動かす動作を同時に別の場所で行っているのですから、これも他の運動とは少し違ってきます。そしてパソコンの作業は総体的に固定的で体幹が動きませんが、お習字などの座業を除いて他の運動は移動という動作が含まれます。
やはりマウス運動はパソコン独特の新しい運動と考える事がいえるのではないでしょうか。またこれらの要素がどうやら疲労とのつながりを意味している様に私は考えています。
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小まとめ |
この様なパソコンを使った動作で、おおまかな疲労の始点となる場所を説明しましたが、今度は実際にそういった疲労が、みなさんの訴えではどの様な箇所に多く集中しているかを考えてみたいと思います。
また、マウスを使った作業に関して実は最大の関心を示している私には、メールでいただいたみなさんの御意見が役に立っています。みなさんに感謝をしつつ紹介したいと思います。
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