頭痛で鎮痛剤を手放せない人は多い。だが長期に使い続けるのは危険だ。
医師から処方される鎮痛剤「フェナセチン」(成分名)を服用していた患者に、腎臓障害などの副作用が相次ぎ、厚生労働省はH13年4月、メーカーに供給停止を要請した。
1994年以降、重い副作用が21人にあり、1人が腎う癌で死亡、5人は人工透析が必要になった。多くは何年間も毎日のように服用していた。
副作用は以前から指摘され、同省は82年、長期使用しないよう、医師向けの「医薬品情報」で呼びかけた。しかし、最近10年間で使用量が1.4倍に増え、乱用の恐れが強いとして、異例の供給停止に踏み切った。注意を守らない医師が多いのである。中略
それでは他の鎮痛剤なら安全だろうか?実は、もっと副作用の強い薬がたくさんある。
ジクロフェナクトリウム、ロキソプロフェナントリウムなどの非ステロイド系抗炎症剤。いずれも医師の処方薬で、リュウマチにも広く使われるが、消化管出血などの副作用がある。米国では、これらを常用するリュウマチ患者らが毎年1万人以上、死亡している、という衝撃的な報告がある。
国内では非ステロイド系抗炎症剤の副作用で「年に6千人以上が胃・十二指腸潰瘍で出血し、600人が死亡している」と医薬ビジランスセンター理事長の医師、浜六郎さんは推計する。禁忌の胃潰瘍患者らにも多用されるためとみられるが、被害規模はフェナセチンの比ではない。
フェナセチンが使えなくなったからといって、これらの薬に切り替えるのは避けなくてはいけない。浜さんは、やむを得ず使う場合、代替薬としてアセトアミノフェンを勧める。
北里大教授の坂井文彦さんは「片頭痛で月に2、3回、鎮痛剤を使う程度なら大きな問題はないが、薬に頼らない生活が大切」と説く。ストレスが原因の緊張型頭痛なら、ストレスをためない、といった具合だ。
頭痛だからと鎮痛剤を漫然と使うのではなく、副作用に細心の注意が必要だ。(田中秀一氏)
|