マッサージを考える  こんた治療院  

 私はマッサージ業が大好きです。私がこのマッサージに出会ったのは、きっとまだ物心つかないころであったと思います。私が生まれた頃にはすでに母は按摩マッサージ指圧師でした。その後、父が治療家になり、私の物心がついたときには家には父のお弟子さんが沢山いました。父や母のお師匠さんも近所にすんでいて、私は実の孫のように接してもらったことを記憶しています。なんでこんなに「マッサージさん」がいるんだろう?そう思う子供の頃は、昭和40年代から50年代です。なにをかくそう私の家では、電話を入れるのに苦労したほどの家でした。また、当時はカラーテレビなどはめずらしく、ほとんどの家ではあって白黒テレビなのですから、カラーテレビなんて買った日には大騒ぎでした!。きっと35才から40才位の人なら、同じ記憶があると思いますけど、写真などはけっこう貴重でしたよね?当時の写真は子供達はピースより、シエー!をしていました。シエーって何か?おじさんと呼ばれる人たちの秘密にしておきましょう。まえがきが長くなりましてすいません!今回の治療の窓<マッサージを考える>は昭和の40年代から現在までの移り変わりを、書き込みました。私の知っている限りの事なんですが。

あんまさん


 「あんまさん」という言葉は今はあまり使われなくなりましたが、私にとってかなり思い出深い言葉です。「あんまさん」について、まず本当の意味について御説明させていただきますと。あんまは「按摩」と書きますが、中国では按じて摩(さする)るという療法で現在では古い言い方になっています。「按摩(アンモー)」は長い間中国の人々に親しまれ、医療として多くの人々に貢献して来ました。現代では押し撫でるという意味で「推掌」すいな療法という言葉が使われています。しかし古い病院へ研修でゆきますと、15年前には受付や、診療室に消えかかった「按摩」の文字がありました。つまり、あんまとは1つの治療術である事を認識していただきたいと思います。そして私の免許証にも、按摩(あんま)の文字が光輝いております。
 いつのころから「あんまさん」が俗語として広まったかは、昭和39年生まれの私にはわかりませんが、別の意味での一人歩きを始めるようになりました。このひとりあるきには、多くの方が困惑したと思います。一番困惑されたのは、目のご不自由な方々と思っております。私が免許を取得して世にデビューした時にも、まだまだあんまの意味がわからない人が大勢いましたし、逆に気を使い過ぎて「あんまさん!あっごめん、マッサージさん!」と言い直す人もいました。「あんまさん」でもいいんですよ!と私が話すとびっくりしている様でした。しかし最近では、あんまの意味も理解していただきながら、堂々と使えるようになってきた様な気がします。このことはきっと一番困惑された方々の御努力であると私は考えております。
 そんな言葉にも親しみが湧いて出るのは、きっと私がそういった人たちと子供の頃から接していたからだと思います。それでそういった方々が、商いとして今日までこの治療法を絶やす事無く、大衆にひろめてくださった事に感謝をしております。いまでは私たちは先生と呼ばれる事が多いのですが、私はなんだか「あんまさん」と呼ばれる方が似合っている気がします。その方がみなさんにとって近付きやすいのならば、なおさらですが。

 
日本のもみ療治は術式が複雑である

 

 その昔は流派が存在した。まだ免許制度が確立していない頃です。現在では流派は学校で指導される基本術式がその流派のながれをくんでいます。がしかし、父や母の時代ですと流派が根強く存在していた様です。こんた治療院に浪越徳二郎先生の色紙が飾ってありますが、浪越先生は世に指圧を広めた方です。聞く所によると父親の師匠と浪越先生は師弟の関係であったとのことです。父とは孫弟子の関係になります。弟子である父の師匠を尋ねて来た時(旅行で)に、代わりに父が治療してその記念に色紙をもらった様です。ちなみに私の出身校である旧小田原衛生学園(現在の学校法人後藤学園神奈川衛生学園)は有名な吉田流の流派を継承していました。しかし私は父と母の術式を伝承されておりますので、流派の治療は父と母から受け継いだものになっています。実はそのルーツは浪越流だった事がわかりました。
  昔から、もみ療治の治療法の術式は、複雑で単なる習い事では修得できないのです。実際に外見では単純な動作でしか映らないのですが、指から伝わる力が微妙に変化するのです。その為にその修得の方法を弟子入りという形で師匠に学んでいたのです。免許制度が無かった時代は、その術を修得するのに4年以上かかったというのです。それほどまでして技術を修得するわけは、治療にかかった人が絶賛するのをまのあたりにしているからです。そして私が父と母のもとで働いているお弟子さんを見ながら育ったためか、それがあたりまえのように修行のように思えていました。
それが私をこの世界に引き込んだ魅力の1つなのですが…。
 その、もみ療治(按摩法・マッサージ法・指圧法)は基本手技と流派独自の技法をあわせるとかなりの種類の術式があるものです。私の頭に浮かぶのは30種類以上もあると思います。豊富なバリエーションはすべて患者さんに用意されたものです。そのバリエーションは首や肩、腰、顔や胸など様々な身体の各パーツに応用されて行きます。ですから父や母などは押し方、もみ方とは未だに言わず、【技(わざ)】という言い方をしています。わたしも技と呼ぶべきものであると確信しております。
 
新聞に「乳もみ」
 

 現在はほとんど見られなくなったこの言葉、実は乳房マッサージといって、乳腺炎を起こしたりして、乳汁(おっぱい)が出なくなったお母さんが受けるマッサージなのです。昭和の40年代までけっこう新聞などで広告欄に書いてあったこの「乳もみ」という言葉は、れっきとした治療なのです。いまでは専門学校でもあまり乳房マッサージを教えなくなった、教える先生がいなくなったという感じだそうです。ましてや治療を希望する人もいなくなっているのは当然だと思います。
  私がまだ小学生の頃は、粉ミルクの普及とお湯やら携帯離乳食やらがまだまだでした。当時のお母さん達はやむなく外出したりする時に、今の様な乳幼児の携帯食なんてありません。赤子がおなかがすいて泣き出すと、人前であろうと電車やバスの中で平気で母乳をあげていた時代です。そんなお母さんの心配は、乳汁(おっぱい)が出なくなる事です。すると乳房マッサージの出番です。当時はそんな中でこのような「乳もみ」という広告は珍しくはありませんでした。しかし今日は、粉ミルクやら携帯離乳食のおかげで、乳汁(おっぱい)が出なくとも、昔ほど深刻ではなくなりました。時代とともに薄れてゆくのは仕方の無い事なのでしょう。

 私の母は、この乳房マッサージを施術していた記憶があります。実際に見た記憶は無いのですが、友達のお母さんや女の人が尋ねてくるとお湯を沸かしてくれと頼まれ、大きな鍋に火をつけて、それが終わると遊びに行けと外に出された記憶があります。今になって考えるとそうだったのかと思います。
 現在ではこの、乳房マッサージは、助産婦さんが主流になって施術を行っています。これも時代を感じる1つです。

 
スポーツトレーナー
 
 時代は新しい分野を築いてくる1つの例は、スポーツトレーナーであろうと思います。私はこの分野はほとんど知りません。がしかし、身体の治療や回復に関しては同じ人間をあつかうのですから、問題はないのですが、スポーツトレーナーは選手の管理が特別のようです。たずさわる事があまりないので、機会があったら是非トライしてみたいと思います。この分野ではまず私たちの資格が有効だそうです。それは鍼治療を取り入れる機会があるためと併用してのマッサージが必要になるそうです。若い治療家はこのトレーナーをめざしている人も多いようですが、新時代のあたらしい動きなのでしょう。現在は野球やサッカー、ゴルフなどはもとより、すべてのプロスポーツに関係しています。
 
昔は治療院は少なく出張が専門だった。
 

 昔は出張専門という言葉はなく、治療院というものが少なく自宅で治療を受けるシステムが主流だった。そのためお年寄りとよばれるその家の大奥様などが多く利用していたのです。若奥様は大奥様のすすめで治療ができると言う感じで、今とは大違いでした。そのなごりで肩は年をとると凝るものという固定観念がうまれたのだろうと思う節があります。70代の方の治療をしていると昔話でこんな話をしていました。その方はおばあちゃんのすすめで、娘時代からこっそり治療をしていたというのです。おばあちゃんがあんまさんを呼ぶと、治療が終わるころにそっと交代して治療してもらっていたと言うのです。こんな事おかあさんに知れたら大変だ!という事らしいんですけど、あんまさんにかかって良いのは一家では、年長者だけと言うのです。若い人がかかるとくせになるというのは、贅沢な事をするな!という意味だったらしいのです。私はこのように患者さんと昔の話をする事で、当時と今とでは私たちの利用され方がちがっていると勉強になる事が沢山あります。マッサージは年をとってから覚えるものだ!という昔の面影は、今の私たちの年代はありません。むしろパソコンや自動車など機械との接点が増えた現代では、肩こりや腰痛は昔以上に若年層に増えています。むしろ主婦などはお薬に頼らず、積極的に治療を受ける事によって、服薬を減らし健康状態を改善して行く努力をしていますし非常に良い事です。
 現代に治療院が増えたのは、交通機関の発達が大きな役割をはたしています。それは自家用車やタクシーなどが頻繁に使われるようになったからです。昔は出かけて行くのは何かとお年寄りは不自由でしたので、こちらから出かけるシステムが主になっていました。逆にいうとそのために若い人が治療を受けるチャンスが少なかったという事が言えます。また時代が若い人を受け付けなかった点もあるようです。しかし現在ではその目的は広く応用され、子供から大人までが自由に来院できる時代がやってきました。私たちの治療はすべての年代の方にご利用していただけます。

 
いろんな国のいろんなマッサージ

 

 私たちの国、日本以外にもこのような、もみ療治に相当するいわゆるマッサージが沢山あります。ドイツやフランスやタイ、中国など、1国1マッサージといわれるくらいに、その種類は多い様です。ただ国家が認めるものと民間でやっているものの違いははっきりとしておりません。少なくともあんまマッサージ指圧は、日本では国家が認めた治療法ですから、生業(なりわい)をするときは国家資格が必要です。
 肩こりについては<治療の窓 治療の窓 保健室の肩こりを考える>を参考にしていただいて、ここではその肩こりは日本人特有の症状だというお話をします。日本人のように肩が凝るという症状は、中国人には厳密にピンとこない様です。「肩酸痛」というのが肩こりに相当する言葉ですが、実際の肩こり症状は微妙に日本人の様なものとは違っていました。これは風土や食生活によるものか?民族か?私自身は中国にいたころ、そういえば日本にいた頃の肩こりは、感じなかった気がします。しかし肩の違和感はありました。お風呂に浸かりたい!と何度も思いましたから。
 では各国のマッサージの目的は何なのでしょう。それは経穴(ツボ)ではなく、リンパ節や皮膚、軟部組織、結合組織などを手や道具(例えばスプーンなど)使って刺激して、身体の変化を調整する方法ですが、精神的なストレスや肉体的な疲労を国民のニーズに答えて発展させています。郷に入れば郷に従えという事は、人間の体調の変化は恒常性保持機能(ホメオスタシス)により自動的に保たれていますが、その国にゆけばその国の治療法に従えといえるのかもしれません。

 
時代は、あんまさん、マッサージさんから、先生と呼ばれるものへ
 

 どうなのでしょうね。この仕事は非常に地味な仕事であるというのが、私の考えです。TVやマスコミで有名になったから腕が立つ?本を出したから腕が良い?それって本当?。わからないな、世間の想像する評価はそこなのかと思ってしまう。
 平成27年で30年間仕事を続けているけど、業界の器は立派になったけど、それを担う人材の成長は、技術的に下降線の様な気がするのは、恐らく私だけではないと思う。例えば、指圧をしっかり行うためには、親指を作らなければならない。これ簡単に書いてしまったけど、実は作り始めたばかりの指は大きく腫れて相当痛い。痛いから休憩というものではなく、カンガン使って行かないと太くて当たりの良い親指ができないのです。私の父の親指は、マムシの頭の様な太くて厚みのある親指でしたので、あれが見本かと思っていました。しかし、そうした過酷な修行をこなす場を経て、初めてスタートラインに立てると思っている私でしたので、今時の先生の親指がとても綺麗で、とても私の理想とかけ離れている事は残念に思っています。
 そうそう、昔、専門学校の講師をしていた頃、教務室で若手の先生に「昔と今とでは学力が違いますよ!」と私につっかかて来たので、「ほう?人間の身体が進化したのか?」と私が聞き返すと、「勉強の内容が充実しています!」と答えてきた。私は「ふ〜ん。」と答えると、彼はそこに居た主任にこう説教されてしまった。「先生は、知識としてあって当然、学力がついても実行力がなければ何の役にも立たないと言っているのがわからないのか?」と言われてしまった。カッコいいー!それ私が言いたかったけど「ふ〜ん」で終わらせたの。だって、答え言ったら勉強にならないじゃない。苦労させないから部下が育たないのだと、後で私が主任を説教したのを覚えています。(笑)
 人間の身体は、まだまだ答えが出せない事が山ほどあるのですから、今の学力とて10年後に笑い者にされるのは当然でしょう、しかし技術的なものは、学校というシステムの中では育ちにくい環境下である事は、自分がその中にいた事で解りました。やはり卒業してから、師弟関係の中で技術が育って行くものだと。されど、先生と呼ばれちゃうんですよね。

 
マッサージは心をもみほぐす
 

 「あーっ気持ちよかった。」そう言って治療が終わると、わたしは1つ心もほぐれたかな?と思います。私自身も息子に背中を踏ませたりして1日をしめくくります。最近は息子が今日は背中踏まなくていいの?と気を使ってくれるほどです。ほんの数分でも緊張がゆるむと、人間は気持ち良いと感じるものです。緊張が長時間続いていると、イライラもつのり人間は自分が思っている以上に、相手からは近寄りがたい存在になることがあります。まずそんなイライラを解消する事の一番簡単な方法は、マッサージを受ける事だと私は感じています。
  マッサージを受けたいと思う人は、その目的も沢山あります。ゴルフやスポーツのアフターケアに利用する人や健康管理の目的の人、疾患の除去目的や精神疲労、ストレス解消など目的は様々です。その人たちが治療後に「あーっ気持ちよかった。」と言ってくれる。そんなときに肉体の治療から心の治療まで、私たちの治療が行き届いたと感じる瞬間です。21世紀の日本のスタートは現実には厳しいといえるでしょう。そんな皆さんへ、サポートできる私どもの唯一の事と言えば、手の温もりを伝えて身体をほぐし、心をもみほぐす事だと思っています。そして伝統的な方法を、実践を通してみなさんへ伝えられれば本望であると思います。

 



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