「あんまさん」という言葉は今はあまり使われなくなりましたが、私にとってかなり思い出深い言葉です。「あんまさん」について、まず本当の意味について御説明させていただきますと。あんまは「按摩」と書きますが、中国では按じて摩(さする)るという療法で現在では古い言い方になっています。「按摩(アンモー)」は長い間中国の人々に親しまれ、医療として多くの人々に貢献して来ました。現代では押し撫でるという意味で「推掌」すいな療法という言葉が使われています。しかし古い病院へ研修でゆきますと、15年前には受付や、診療室に消えかかった「按摩」の文字がありました。つまり、あんまとは1つの治療術である事を認識していただきたいと思います。そして私の免許証にも、按摩(あんま)の文字が光輝いております。
いつのころから「あんまさん」が俗語として広まったかは、昭和39年生まれの私にはわかりませんが、別の意味での一人歩きを始めるようになりました。このひとりあるきには、多くの方が困惑したと思います。一番困惑されたのは、目のご不自由な方々と思っております。私が免許を取得して世にデビューした時にも、まだまだあんまの意味がわからない人が大勢いましたし、逆に気を使い過ぎて「あんまさん!あっごめん、マッサージさん!」と言い直す人もいました。「あんまさん」でもいいんですよ!と私が話すとびっくりしている様でした。しかし最近では、あんまの意味も理解していただきながら、堂々と使えるようになってきた様な気がします。このことはきっと一番困惑された方々の御努力であると私は考えております。
そんな言葉にも親しみが湧いて出るのは、きっと私がそういった人たちと子供の頃から接していたからだと思います。それでそういった方々が、商いとして今日までこの治療法を絶やす事無く、大衆にひろめてくださった事に感謝をしております。いまでは私たちは先生と呼ばれる事が多いのですが、私はなんだか「あんまさん」と呼ばれる方が似合っている気がします。その方がみなさんにとって近付きやすいのならば、なおさらですが。