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昔から、患者さんからよく聞かれる事が多い質問なんですが、「先生、ツボっていったいなんですか?」と聞かれます。私も患者さんが、どの程度ツボについての知識があるのかとても興味があります。そこで今回はこのツボについて考えてみたいと思います。 |
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私はいつもツボとは、例えて言うなら、『身体を調整するスイッチ』とお話ししています。このスイッチは身体の表面だけでなく、内部を調整する機能があると話しています。この事は皆さん御存じの、足の三里(胃のツボで、膝下外側にある)で説明をします。私はこの足の三里に鍼をして、胃の運動が本当に改善できるのか、病院で胃透視をする機械を用いて確認をしたことがありました。なんと刺針前と刺針直後ではっきりとその違いを確認できました。百聞は一見にしかずというのは、この事かと思いました。足にあるツボで、胃に変化が出る事は西洋医学では答えが出ません。しかし、動くだけでは治療につながる事は、ほんの少しの意味しか持ちません。なぞは深まるばかりですが…。
経穴(ツボ)を見つけた人は凄いですよね!
古典的には、昔中国に、扁雀(へんじゃく)という人がいたそうで、なんでも人の身体を透視できたそうです。私には???ですが。そういった人が経穴の存在(場所)を明確にして行った様です。扁雀(へんじゃく)というのは個人ではなく扁雀族という説もありまして、その人々は中国の泰山のふもと泰安市あたりにいたそうですが、なにせ確実な証拠はないようです。
私は、あるお仕事のお手伝いで、泰山へ登って山頂で一泊して、「地の気の集まるスポット」を探した事があります。「泰山登らずに国治める事なかれ」と言われるように、この山は杜甫や李白、中国の諸皇帝も登り、すばらしい力を授かったという話があります。私はその扁雀が住んでいた土地と、泰山の恵みを授かったのかな?後で大学にもどって教授にその事を話すと、きっと何かの財産になると笑っておりました。泰山は道教のお寺がありまして、日本の仏教学部のある大学教授らが多数訪れておりました。お寺の総住職さんと、2時間ほどお話をうかがって道教と中医学の発達の原点を学びました。
経穴(ツボ)は小さいけど、壮大なスケールをもって語らなければいけない!のですが 、近代文明の発達でさらに様々な事が科学的に解明されて来てから、古代の偉人達が本当の意味でどう使っていたのかが、逆に見えなくなってきていると思う今日、非常に複雑な思いです。
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私は、身体を、絵を描くキャンバスに例えて説明しています。そして経穴(ツボ)を絵の具に例えて説明してゆきます。
まず疾患を起こした身体は、キャンバスが疾患色に染まっています。まずその疾患色を基本的に、もとの色に戻すために経穴(ツボ)を絵の具に見立てて、調合してペイントしてゆくのです。
例えば人の数だけキャンバスの下地の色が違いますので、絵の具の調合も単純ではありません。ピンク色を造る時には、白と赤を使いますが、白の割合いと赤の割合いは、キャンバスの下地の色(患者さんの年令・性別・発育状態など)と変化後のキャンバスの色(病気の進行)を考慮に入れます。
そして私の作業は病気で変化したキャンバスの色を、もとの下地の色へもどるように仕向ける作業が経穴(ツボ)の選択です。
すると場合によっては、極端に反対の色を追加して調節する作業が行われます。そういった作業に絵の具の種類が必要になるのです。ですからツボの数は複数とることがあります。
その為、私はこのような作業の時、治療家としての自分に最大の集中力を求めます。「10人十色 」といいますが、ひとり一人へのツボのマッチングは大変な作業です。
しかし、私たち中医師は「少而精」(シャオ・アール・ジン)といって、少ないツボで最大の効果をあげる事を意味とし、私たちは日々努力をしています。この努力が古来より続けられて来た為に、さらに1つ1つの経穴(ツボ)の効果が明確になってきていると思います。不用意に沢山の経穴(ツボ)を選択するのも、問題ですね。
ツボってなんなのか?から、このツボはどんなツボなのか?に発展するまでに中国や日本ではかなりの時間を費やしています。ツボは、まだまだなぞが多くて研究心をかきたてます。
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私は病院で研修生に「先生、高血圧のツボってどこですか?」と聞かれると、そんなツボはこの世にないときっぱりと言い切ると、研修生はびっくりして「教科書に書いてある」と反論してきます。では、高血圧であるとなぜわかる?と言うと、血圧を測ったからですよ!と言うのです。血圧計は現代になって作られた物でしょう?ツボは血圧計が無い時代からあるんですよ!と言うと、じゃあどうして血圧のツボとして教科書に書いてあるんですか?と反論攻めにあいます。では血圧が上がる理由は?どんな病気であがる?拡張期血圧が高い場合、収縮期血圧が高い場合、まだまだあるよ腎臓性、心臓性、動脈硬化性や心理的に白衣性高血圧(ホワイトコートハイパーテンション)なんてのもあるし、糖尿病による合併症としての高血圧もあるし、家族性高血圧は生まれつき血圧が高い人もいる。原因がはっきりしない本態性高血圧。それら全てが血圧のツボと称するものでカバーできますか?というとやっとわかってくれる状況です。
高血圧とは一つの症状の現れです、原因を除去しなければ血圧は落ち着きません。ですからその人の不調を改善する為に考えたツボの組み合わせが正しければ、その結果として血圧が安定するものです。というと、うなずいてくれます。しかし!!!その方法が一番難しくて、頭を悩ませながら日々私は苦労している事なんです!と心の底から言いたい!。「血圧のツボ」なんて漠然とした言い方プロがしているから、医者に何と医学知識が薄いんだと言われるんですよね。
中国医学はその患者の現在の症状を的確に捕らえ、生きた治療をするための方法です、病気の進行によりたえず処方を変えて行くものです。だから治療効果が期待できる医学なのです。ちょっと熱がはいった文になってしまいました。
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ツボは正式には経穴(けいけつ)と言います。穴(あな)と書いてあります。孔(コウ)や竅(きょう)も同じ穴(あな)の意味があります。経は経絡(けいらく)の事で筋道(すじみち)という事です。その筋道にあいた穴が経穴(けいけつ)いわゆるツボです。体外から、内部に向かって連絡をとるために、ツボがあると教わりました。
やっぱりツボは点という意味ではなく、穴のあいた毛穴のような目に見えないもので、孔(コウ)や竅(きょう)というイメージが私には強いのです。面積でいえば点でしょうけれど....。
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